よりよい未来を選ぶ不動産ラボ

ルールのこと

農地転用についてPART1

農地転用についてPART1

>>このページでは、

「どうして農地転用なんて手続きをしないといけないの?

勝手に使えばいいんじゃないの?」という根本的な疑問を解決します。

※この記事を読んだあなたは、農地転用に関するLevel1▶︎8(10段階)をマスターできます。(お急ぎの方は、上から1スクロール分と最下部から2スクロール分くらいを読むだけでも役立つと思います。)「ねえねえ、なんで農地を勝手に宅地にしちゃいけないのか・・・知ってる?」「いや、知らんけど」「でしょ!?実はね~」と、明日からドヤ顔でウンチクをかませます。

農地転用とは、『農地を他の用途で使える土地にすること』

 いま現在、農地や採草放牧地になっている場所を(駐車場や資材置き場として使いたいな~。)と思ったら、(もう畑として使ってないし、そのまま車や資材を置いてもOKでしょ!)と思われがちなのですが、実はそれ、法律でNGだった・・・!ということがあります。 “ ある地域に指定されている土地 ” でやってしまうと、厳重注意または罰則を受けることになるのですが、その地域というのが 農業振興地域(のうぎょうしんこうちいき) です。

 土地探しをしている方の中には、すでに農振(ノーシン)や農転(ノーテン)という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃると思いますが、これは、農地と採草放牧地の使い方に関する法律を定めた 『農地法』 に出てくる 農業振興地域 と 農地転用 を略した言葉です。

 また、売地の資料を見ると、備考欄に「4条申請」や「5条申請」が必要です、と書いてある物件があったりしますが、(本物件は宅地ではないので、建築するには農転が必要です。)という意味の記載です。不動産に関する法律は分類が細かい上に専門用語ばかりでややこしいので、まずは本制度の根本的な知識や考え方からご説明したいと思います。

私たちが住んでいる地域で考えてみた。

 まずは、あなたが住む 山梨県 とはどんな地域なのか?を、ザクッとお伝えします。

 山梨でいちばん認知度の高いものといえば『富士山』ですが、実は日本で第二位の高峰も山梨県内にあるというのはご存知でしょうか? その山の名は、“北岳”(kitadake)。標高3193mの 南アルプス市北部 に位置する山で、ダイナミックな岩壁や大パノラマ、そして高山植物や美しい花畑が人気の “ 日本百名山の一座(山を数える時の単位は、座)” です。北岳がある一帯は、通称「白峰三山(シラネサンザン)」と呼ばれ、ここには標高3000mを超える山が5座も連なっています。富士山や北岳をはじめ、高峰の山々からなる ゆたかな自然 と 美しい景観 に恵まれた場所・・・それが、私たちの住んでいる山梨の、ざっくりすぎるご紹介です。

 「これじゃ山ばっかりじゃん。」と思ったあなた、鋭い視点をお持ちですね。

 山梨には27の市町村がありますが、その内22の市町村は 中山間地域 とよばれる「平地の端から山間部にかけての(農作物を作る)地域」を有しています。甲府盆地をイメージすると、その周りをぐるりと山が囲んでいますよね。

 見渡す限りの広い空、コントラストが美しい山々。秋になれば、赤黄緑の絨毯をぶわりと敷いたような紅葉のグラデーションが楽しめます。では、勝沼の方でも南プスの方でもいいので、イメージの中の「山の中腹あたり」に目を凝らしてみて下さい。山頂から民家の多い市街地へと下ってくる間には、葡萄・桃・さくらんぼ・棚田といった水田・畑・果樹園の多い農村風景が思い浮かぶと思います。畑や民家がある程度まとまっている場所もあれば、点々と在るところも・・・。その「あー、この辺で “ 田舎暮らし ” できたら、のどかに過ごせそうだなぁ~・・・っぽいところ」(市街地の端~山奥の手前くらい)が、超ざっくり見積もった感じの 『 中 山 間 地 域 』 です。

※本当にざっくりなので、気になる方は“中山間地域”で検索してみて下さいね。

 そう考えると山梨には、こういう場所・・・結構、多いですよね。

 山梨の良いところでもある “ 自然に恵まれた田舎らしさ ” がプラスの評価を受け、移住したい県としては上位をキープできているのかもしれませんが、実は、山梨県の 約8割 は 山林 が占めています。そして残りの 約2割 が 可住 とよばれる地域で まち(“都市的”な土地利用)と、 農用地(“農業的”な土地利用)が混在している状況です。

 つまり、私たちが「畑多いな~」と思って見ている景色は、山梨県全体で考えれば、「たった20%程度の土地の中の、さらにピンポイントな一部」

でしかないのです。日常生活の中で、実は共通の知人がいたり、あのとき同じ場所にいたらしいという話が出たりすると「山梨って狭いよね!」とつい言ってしまうのですが、その通りなんです。本当に、私たちは少ない 可住地 の中で暮らしていたんです。

 土地面積だけで考えてみると山梨は日本全国で32番目に広い土地を有しているのですが、その内の 可住地面積 に絞ってみると、なんと47都道府県の中で “ 第45位 ”(下から2番目!)なのです。甲府盆地をもう一度イメージしてみると…正直そこまで可住地が少ないとは思っていませんでしたが…確かに、まちが広がっているというよりは、やっぱり、山、山、山、です。

 さて、ここで少し視野を広げて、別の視点で考えてみましょう。

“ 中山間地域とそこにある畑 ” の役割を知る。

 日本全体では中山間地域が 国土の約7割 を占めているのですが、この地域で多くの『農業』が営まれています。そんな中山間地域やそこにある畑・採草放牧地は、生産だけでなく、次のような役割も担っています。

⬜︎多様な生態系、動植物を育む

⬜︎水資源を保ち、養う

⬜︎美しい自然環境に恵まれた居住空間・余暇保養空間の提供

⬜︎自然とのふれあいを通じた教育の場の提供

⬜︎伝統文化の継承・地域の多様性の維持

 くだけた説明をすれば、中山間地域に畑を持つ農家さんは、私たちがスーパーマーケットで手にする食糧を生産して下さっているだけでなく、畑を適切に管理することによって、畑の持つ「土の流出を防ぐ機能」で「土砂崩れや水害の緩和」に助力しているのです。また、観光農園となっている果樹園や公園など施設は、自然に触れてリフレッシュしたい人のための憩いの場・子どもたちの学びの場になり、中山間地域に残る集落では古来からの言い伝えや先人の知恵・技術・文化が今もなお息づいています。そこでは動植物との共存が日常で、その地域にしか存在し得ない独自の生態系が育まれていたり、自然環境を生かした特産品や伝統工芸の伝達に携わっている方が住んでいることが多い地域でもあります。

 つまり、私たちが

(ただの「畑ばっかりの地域」だから、どんどん開発すればいいのに~)

 と安易に手を加えたり、人間社会のことだけを考えて開発してしまうと、

“(普段の生活が)当たり前すぎて、想像もしなかったけれど、自分たちの生活に 大きな影響が及ぶ可能性が高い ” ので、農地を勝手に減らさないよう、維持管理する必要があるのです。

 新鮮な野菜やくだものを食べられなくなったら。土砂災害が起きやすくなったら。田舎っぽい風景が見れなくなったら。日本古来から受け継がれてきた伝統が消えたら。そこにしか存在していなかった希少な動植物が絶滅したら。特産品や工芸品、芸能を教えてくれる師匠が存在しなくなったら・・・。そう考えると、失いたくないものばかりです。

 では、その「大事にすべき農地」の線引きは、一体どこになるのでしょうか?

 住民の生活を守るために管理しなければならないということは、先ほどざっくり見積もった「あー、この辺で~」みたいないい加減な基準では困るので、しっかりとした区分けが必要です。その区域を定めたものが 『農業振興地域』いわゆる、農振(ノーシン)です。

 「未来のために失いたくないから、振興して(盛り上げて)いきましょう!」と定められた場所なので、この地域にある土地はより一層、農転に対する審査が厳しくなります。もし、その土地が農振(ノーシン)地域の中にあった場合は、さらに、もう一つの手続き「 農振除外 」も 必要 になってきます。先にノーシンを外してもらうための申請・許可を得て、その後に農転の申請に移行しないといけないのです。

 ちなみに、農地転用(ノーテン)だけであれば、現在は毎月10日が申請書の提出締め切り(そこから1ヶ月ほどかかって審査の可否が下りてくる)なのですが、農振除外(ノーシンを外す)の申請については、許可が下りる・下りないという問題の前に

「申請できる土地」と「できない土地」が、あらかじめ決まっています。

それが、“ 青地(アオジ)” と “白地(シロジ)” の違いです。

 もしかしたら、自分のおじいちゃん・おばあちゃんや親が畑を持っていて(あの畑に家を建てたいんだよな~・・・)と考えていた人は、宅地にできるかどうかを調べていく中で出会ったことのある単語かもしれません。

 何事も特例はあるのでその辺は割愛しますが、次の記事<農地転用PART2>では、この『青地ってなに?』の続きからザクザク〜っと説明していきます。

前へ 次へ
不動産ラボ トップへ戻る